緊張すると突然意識を失ってしまうナルコレプシーという奇病を抱えるマイク(リヴァー・フェニックス)は12歳の時に母親に捨てられて故郷のアイダホを離れ、ポートランドの路上で体を売って暮らしている。スコット(キアヌ・リーヴス)はポートランド市長の息子で何不自由なく育ったが、家庭に温かさを感じられず、家を出て男娼をしている。
母親を探す決意をしたマイクは、スコットを誘ってバイクでアイダホにいる兄を訪ねる。そこで渡された絵葉書を手がかりに母が務めていたホテルに向かうが、イタリアからの便りのみが残されていた。二人は体を売って往復の旅費を稼いでローマに飛び、母が働いているという農場にたどり着く。しかし、母はアメリカに帰るとだけ言ってすでに消息を絶っていた。失意のマイクにスコットは別れを告げ、二人はそれぞれの道を進んでいく。
『ドラッグストア・カウボーイ』(89)で注目を集め、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)、『ミルク』(08)でオスカー候補、『エレファント』(03)でカンヌ国際映画祭パルムドールと監督賞を受賞、新作『デッドマンズ・ワイヤー』が7月に公開される、アメリカを代表する名匠ガス・ヴァン・サント。彼がアメリカで最も美しい街と語るポートランドを舞台にリヴァー・フェニックスとキアヌ・リーヴスを主演に迎え、男娼として生きる二人の友情を軸にアメリカの姿を見つめ直し、家への回帰という現代にも通じるテーマを詩的に、ファンタジックに描いた。
今は亡きリヴァー・フェニックス、若き日のキアヌ・リーヴスの共演は本作でしか観ることはできない。映画史に残る美しい姿は必見。
製作から35年、今回、初めてデジタルリマスター版で上映される。
リヴァー・フェニックス
1970年8月23日、オレゴン州マドラス生まれ。10歳でテレビに初出演、広告やテレビの仕事を経て、1985年に『エクスプロラーズ』で映画デビュー。『スタンド・バイ・ミー』(86)のクリス役で注目を集め、『モスキート・コースト』(86)では、ハリソン・フォードの息子役、『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(89)では少年時代のジョーンズを演じた。シドニー・ルメット監督の『旅立ちの時』(88)でアカデミー賞やゴールデングローブ賞の助演男優賞にノミネートされ、『マイ・プライベート・アイダホ』(91)でヴェネチア国際映画祭やインディペンデント・スピリット・アワードなどの主演男優賞を受賞。世界的人気を獲得し、俳優として順風満帆だったが、1993年10月31日、薬物の過剰摂取による心不全のため、ジョニー・デップが経営するナイトクラブ「ザ・ヴァイパー・ルーム」の前で倒れ、そのまま23歳の若さでこの世を去った。
キアヌ・リーヴス
1964年9月2日、レバノン・ベイルートで生まれ、カナダのトロントで育つ。俳優を志し、17歳で高校を退学。カナダで舞台やTVを中心に活動し、『栄光のエンブレム』(86)に出演後、ハリウッドに拠点を移す。ティーンの人気を獲得した『ビルとテッドの大冒険』(89)、親友であるリヴァー・フェニックスと共演した『マイ・プライベート・アイダホ」(91)、キャスリン・ビグロー監督の『ハートブルー』(91)など幅広いジャンルの作品に出演、1994年に主演した『スピード』が大ヒット、全世界で3億5,000万ドルを超える興行収入を記録。SFアクションの新時代を切り開いたと言われる『マトリックス』シリーズ(99~21)は、映画の枠を超えた一大ブームとなった。2014年から23年までに4作品公開された『ジョン・ウィック』シリーズでは、従来のガンアクションにマーシャルアーツやカンフーなどを組み合わせたハードなアクションを見せている。
新たなドラッグを手に入れるため、ドラッグストアを荒らし、その日暮らしをするボブ(マット・ディロン)と妻ダイアン(ケリー・リンチ)や友人リック(ジェームズ・レマー)、10代のナディーン(ヘザー・グラハム)。犯罪のスリルとドラッグが全身を包み込む快感。それさえあれば満足だった。ところが、ある日、ナディーンが犯した事故が引き金となって仲間たちの関係に亀裂が入り、歯車が狂い始める。
リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーヴスが共演した『マイ・プライベート・アイダホ』(91)、オスカー候補となった『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)、『ミルク』(08)、カンヌ国際映画祭でパルムドールと監督賞を受賞した『エレファント』(03)などを監督し、新作『デッドマンズ・ワイヤー』が7月に公開される、アメリカを代表する名匠ガス・ヴァン・サントの35mm長編映画デビュー作。ドラッグなしでは生きられない若者たちの姿により、アメリカン・ドリームの裏側を浮き彫りにして孤独と喪失に彩られた世界をユーモアも交えて描き、北米のみでなく、ヨーロッパ、日本でもロングランヒットし、数々の映画賞を受賞した。ガス・ヴァン・サントは、本作で一気に名を知らしめ、映画ファンから新作が待たれる監督となった。主演はフランシス・フォード・コッポラの『アウトサイダー』『ランブルフィッシュ』(ともに83)で多くのファンを獲得したマット・ディロン。その妻役を大ヒット作『カクテル』(88)で注目を浴びたケリー・リンチ。二人が抱き合っているポスターは、公開当時、上映している映画館で貼る度に盗まれたという逸話も残っている。
マット・ディロン
1964年2月18日、ニューヨーク州、ニューロシェル生まれ。中学生の時にスカウトされ、1978年に『レベルポイント』で映画デビュー。1980年に『リトル・ダーリング』、『マイ・ボディーガード』の不良役で人気に。1983年、フランシス・フォード・コッポラの『アウトサイダー』で鮮烈な印象を残し、同年に同じくコッポラ監督の『ランブルフィッシュ』に主演、一躍トップスターとなった。『ドラッグストア・カウボーイ』(89)でジャンキーを演じ、インディペンデント・スピリット賞の男優賞受賞。その後、『シングルス』(92)や『最高の恋人』(94)、『メリーに首ったけ』(98)などの恋愛映画にも出演している。『ドラッグストア・カウボーイ』に続いて出演したガス・ヴァン・サント監督の実話を基にしたサスペンススリラー『誘う女』(95)は、ニコール・キッドマンがゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞するなど高い評価を得た。アカデミー作品賞受賞作『クラッシュ』(05)では、助演男優賞にノミネートされた。M・ナイト・シャマラン監督・制作総指揮のTVシリーズ「ウェイワード・パインズ 出口のない街」(15)で主演を務めている。2018年にカンヌ映画祭に出品されたラース・フォン・トリアー監督・脚本の『ハウス・ジャック・ビルト』ではサイコキラーをリアルに演じ切った。
ケリー・リンチ
1959年1月31日 、ミネソタ州生まれ。21歳の時にニューヨークに移り、モデルとして活躍、TVシリーズに数多く出演。マイケル・J・フォックス主演の 『再会の街/ブライトライツ・ビッグシティ』(88)の端役を経て、同年トム・クルーズ主演で大ヒットした『カクテル』で見事なプロポーションを披露して注目される。翌年、『ドラッグストア・カウボーイ』でジャンキーを演じ切り、個性派女優としても認知された。以降は『ヘブンズ・プリズナー』(96)など複雑な立場に直面する女性を好演している。
1952年7月24日、ケンタッキー州ルイビル生まれ。父親がセールスマンのため、引っ越しすることが多く、高校時代をオレゴン州ポートランドで過ごす。ガス・ヴァン・サントは、ポートランドをアメリカで最も美しい街と語り、後の作品に大きな影響を与える。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで絵画と映画を学んだ後、CM製作の仕事に従事する。一時は、ロジャー・コーマンの助手も務めていた。1985年に『マラノーチェ』で映画監督デビュー。1989年にマット・ディロン主演で初の35mm長編作品『ドラッグストア・カウボーイ』を発表し、全米各地の映画批評家協会賞やインディペンデント・スピリット賞といった映画賞を数多く受賞。次の『マイ・プライベート・アイダホ』(91)では主演のリヴァー・フェニックスがヴェネツィア国際映画祭主演男優賞などを受賞し、アメリカのインディペンデント界を代表する監督となる。この初期の3作品は「ポートランド三部作」として知られており、ガス・ヴァン・サント監督の原点的作品となっている。
その後、ハリウッドでも活動するようになり、当時無名であったマット・デイモンとベン・アフレックによる脚本の『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)はアカデミー監督賞をはじめ、9部門にノミネートされ、アカデミー脚本賞とロビン・ウィリアムズのアカデミー助演男優賞に輝いた。2003年には、コロンバイン高校銃乱射事件をモチーフにした『エレファント』を発表し、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールと監督賞をダブル受賞する。2007年には『パラノイドパーク』で再びカンヌ国際映画祭に参加し、特別賞を受賞した。ゲイの政治家ハーヴェイ・ミルクの生涯を描いた『ミルク』(08)では、2度目のアカデミー監督賞候補となり、主演を務めたショーン・ペンがアカデミー主演男優賞を、ダスティン・ランス・ブラックが脚本賞を受賞している。その後も『永遠の僕たち』(11)、『わたしはロランス』(13)、『ドント・ウォーリー』(18)などを発表した。
今年7月には、1977年のインディアナポリスでの人質を題材にした『デッドマンズ・ワイヤー』が日本で公開される。


















